4.発達を促すステップ


●つながりをつけるための遊び

K先生(故人)が指導して下さった事柄は、

「子供の発達」に基づき、長男の体験してこなかった「親子のつながり」をつけるためのもの、健常児だったら、自然と子供から要求される事柄でした。

 

<ポイント>

〇子供に対応するときは、子供の目線に合わせ低い姿勢で、子供の感情を揺り動かすように大きな声で、はっきりした発音で遊ぶ。

「褒める」時や「しかる」時は、子供に喜びや怒りをわかるように表現し、子供の感情を揺さぶるように対応する。そうする事によってメリハリのある生活が送れる。

それが、新ためて「親子のつながり」から子供の「発達の芽」を刺激し、成長を促すスタートとなりました。

 

 

指導の下、実践してきた事柄は、

まず、心を解放させる遊びを行うことでした。

1 自閉的傾向の子供は、直接手で触れたり、抱っこを好まないので、シーツをかぶり、「オバケー」と言って、追いかけたり、シーツでくるんで、くすぐったり、シーツを介してプロレスごっこなどをして身体を触れることに慣れさせ、スキンシップの遊びをする。このようにして、肌が触れることに抵抗をなくしていきました。

 マットレスを敷き、その上で、手をつないで、ピョンピョン飛びはねて遊ぶ。知らない間に手を繋ぐなどスキンシップができる。できるだけ体を使っての遊びをして、心を解放させる。

 

 押し入れの段から、マットレスの上に飛び降りをさせて遊ぶ。

また、すごい怖がりでたった5㎝ほどの段差でも両手を床に付き後ろ向きに降りるほどだった為、広い板をもらってきて、ソファーに立てかけて、家の中に小さな滑り台を作り、子供を滑らせる。怖がっても子供のできるレベルからチャレンジさせる。

 身体を揺らし、身体の緊張を解きほぐし、心をリラックスさせる。子供用の小さな「室内用鉄棒」を購入し、「ブランコ」を設置。ブランコに乗せて揺らす。身体が心地よく揺れることにより、身体が硬かったのが、自然と解きほぐされていきました。

5 人の側にいることを嫌がったため、狭い空間に入れて慣れさせていくようにダンボールを電車に見立て、次男と共に電車ごっこをしました。

 

 手の感触が敏感で、土に触れる事を嫌っていた為、庭にバケツ一杯ほどの「砂場」を作りお団子を作ったり、砂に直に触れさせる。最初は、私が砂団子を作り、それを見ているだけでしたが、徐々に、砂に触れるようになりました。

 絵描き歌を歌いながら、お絵かきをする。「あひる」「コックさん」など。

子供は、無関心でも、子供のそばに座って行う。親が落ち着いていると、子供も落ち着いてくる。

 

 「手遊び歌」を歌ってあげる。「手をたたきましょう」など。

 

9 指に顔を描いた「サック」をはめ、歌って遊ぶ(お話し指さん)。

10 子供の座っている傍で、折り紙などをする。

「やっこさんだよ」「鶴だよ」「紙鉄砲だよ」と話しかけつつ。

また、新聞紙で兜を折り、頭にかぶせて遊ぶ。

11 言葉と行動が一致するように一緒に行動する。

例:人間には「言葉」があるということを理解させる為、ヘレンケラーとサリバン先生のように、一緒に行動を行う。

家の中で「ゴミ」があったら、「ゴミを捨てようね。」と言葉かけながら、一緒に「ゴミを拾い、「ゴミ箱」まで連れて行き、「ゴミを捨てる」という行動と共に「ゴミ」と言う言葉と「捨てる」と言う行動がどういう動作なのか、言葉の意味を理解させることにつながります。最初は、ロボットのようであっても、一緒に行動するということで信頼関係も築けます。

12 排尿のしつけ

その頃、排尿のしつけもできておらず「おもらし」をした時でも、失敗したという顔を見せず、ゲラゲラ笑っています。それで、先生が教えてくれたのは、自分専用のタンスに動物シールを貼り、どの引き出しに何が入っているかわかりやすくし、失敗した時は、怖い顔で「いけないこと」と言葉で説明し、一緒に雑巾のある場所まで連れて行き、雑巾を持って自分で拭かせる。そして、タンスから自分のパンツの入っている動物シールからパンツを出させ、着替える。

これらのことが出来たときは、オーバーな位な表現で声を大きく、言葉をはっきりと相手にわかるように明るく嬉しい感情を表し褒めてあげる。

13 「しつけ」は、子供の気持ちをくみ取ってしつけていく。

言葉は、「ダメ!」と言う強い口調では無く、「〇〇だから、やめようね」「〇〇が終わったら、やろうね」など、と理由がわかるはずは無いという気持ちでは無く、わかってもらえるという信じる心を持って接していく。

 

14 同年齢の子供と「比較しない」現在のレベルを考えて、欠けている部分を補う。

15 パニックを起こすから、その場所を避けるのでは無く、普通に社会の中で生活していけるように段階的に慣れさせていく。

例:デパートなど雑踏、工事中の音とかが嫌いで、パニックを起こしていました。しかし、将来を考えた場合、避けて生きていくことはできません。耳をふさぎ泣き出してパニックを起こし嫌がっていたデパートにも連れて行きました。ただし、必ず、まずは、子供コーナーに行き遊ばせます。また、屋上の遊園地だったり。(今はあるかどうかわかりませんが、当時は、デパートに子供の遊ぶ場所がありました)おもちゃコーナーの電車売り場だったり、ここは、楽しい所だと思わせなければなりません。遊ばせながら人ごみに慣れさせていくようにしました。現在では、お祭りが大好きなほど、人混みが平気になっています。

 

16 手をかけて良い事と手を抜いて良い事がある。

大人は心配のあまり、先に、安全レールを引きがちですが、このように接していると、子供は、自分から行動する意欲を失い、成長するチャンスを取り上げる結果となります。時には、わざと困らせたり、自分で行動できるまで待つということも必要です。できない場合には、ヒントを与えたりして言葉をかけ、背中を押して行動できるようにアドバイスすることが大事だと思います。

17 明らかに、わがままだと思える時は、無視する。言葉かけを行うと更にに相手を困らせる行動になる。(これは、大人になっても効き目があります。)

時々パニックをおこし、道路にひっくり返って泣きました。言葉が無い為、自分の気に入らない時は、その様にして意思表示をしたと思いますが、道路でひっくり返れば自分の思い通りになるというパターンは作りたくなかったので、周りの人は驚いて顔をしかめていましたが、私は、そんな事をしてもチヤホヤしないという毅然とした態度で接しました。それが功をはくしたのか、親の注意を引くための常同行動に移行しませんでした。

 

大きくなっても何度も注意されるような行動をしたことがあります。そういう時は、ビシッと怒り、全く口をきかず無視しました。そうすると、本気で怒られていることが伝わり、しょげていましたが、だからと言って親子関係が崩れるようなことはありませんでした。

18 「お手伝い」をさせて、認める、「褒める」ことで、自信をつけさせ、行動への意欲につなげる。

簡単な「お箸をとって」「みかんとって」など、子供にできる「お手伝い」をさせる事により、言っている事と行動の一致をつなげると共に、言っている意味の理解と指示に従う練習と、できた時は、「ありがとう」の言葉と「褒める」事により、本人の自信につながり、行動への意欲につながっていきました。現在、一人で電車に乗り、どこにでも行けるのは、この小さい時に「お手伝い」をよくさせていたからだと思います。

19 子供の生活全体をとらえる。生活のけじめをつける。(朝昼晩)

自閉的傾向の子供は、どうしても、1日のサイクルが曖昧です。息子もいままで、寝転んで、ミニカーのタイヤを眺めていた生活から、親の先導でしたが、身体を動かす遊びをしたり、お手伝いをしたりして、朝昼晩の区切りがついて行きました。

 

自閉症に限らず、どんな障がいを持っていても、何もやりたがらないからと言って、ほっとくのでは、何も進歩しません。子供の嫌がることを避けるのでは無く、いかに興味を持ってもらえるか工夫し、言葉をかけ、導き、世界を広げていくことが大切だと思います。

子供は興味を示さず、親のひとり遊びになり、壁に向かって話しかけているような状態であろうと、心静かに大人が遊びの手本を示しました。興味を持ってもらうためには、大人は、無理強いせず、根気よく相手をするのです。子供は見ていないようでいて、しっかり見ているのです。

見ていたことは、言葉がしゃべれるようになってから、表現することが多々ありました。

健康な子供は「真似」をして、そこから「発達」していく「親子のつながり」がついていなければ、信頼関係は築けず真似はせず、発達は望めない。

自閉症は、親が原因ではないけれど、発達を望むのであれば「親子のつながり」が大切なのだということを実感しました。