2.自分から知恵をつけることは難しいのでは?


●「違い」

3年後、次男が生まれ、長男との大きな違いに気づかされました。

健常な子供は、赤ん坊のうちから「おむつが濡れた」、「おなかが空いた」と言っては泣いて訴え、親へのアプローチが多いのです。母親の後を目で追い、甘え、感情を表し、自分からのアプローチは盛んで、何でも興味を示し、言葉はしゃべれなくても「あ、あ」とだけ言って目を見つめてくれれば、何を言わんとしているかわかります。「指差し」ができるようになると、なお、察しがつき、自然と言葉かけが発生し、そこで親子のコミュニケーションが取れます。自分から色んなものに興味を示し、知識をどんどん吸収して知恵をつけていきます。

自分の要求が思うようにいかない時は、「ぐずり」ます。そうすると、おとな達は、ご機嫌をとるためあやします。それに対し反応、喜びニコニコ笑います。感情が豊かです。親が見えなくなると泣き、甘えて抱きついてきたり、子供らしいしぐさを見せたり、自然と笑みがあふれ、癒され、何もしなくても可愛さ百倍です。愛情もわきます。しかし、長男の同時期は、全く違いました。自分から親へのアプローチは無く、ミルクが足りなかったくらいです。放っておけばいつまでも寝ていて、親に対し甘えることも無く、おとなしく手がかからない良い子でした。自分からの要求は、目を合わせることなく(自閉症の特徴です)、あらぬ方向を見たまま、黙って、私の腕を引っ張って、目的のところまで連れて行く、いわゆる「クレーン現象」で事を成します。「指差し」もせず(自閉症の特徴です。)親を親とも思わないような行動と子供が何を考えているかわからない状況に私は戸惑っていました。こちらの言っていることもわからないので、指示には従わない。躾も出来ない。興味は換気扇や扇風機など回るもの、機械物。親が名前を読んでも振り向きもしない。夜は、寝つきが悪くなかなか寝ず、挙句に、普段、ニコニコ笑いもしないのに夜中に突然ワハハ笑い出し、夜中の2時、3時位にやっと寝付くという状態です。それでも朝の7時には起きてしまいます。夜は寝ないのでこちらも睡眠不足。本人も睡眠不足なので、日中は起きても、ごろんと横になり、小さなミニカーを動かして、タイヤの回るところだけをじっと見て日長一日過ごす。それなのに、一歩外に出れば、鉄砲玉のように飛び出してしまい、親の行く反対方向に走って行ってしまい、車に飛び込んでいってしまいそうになり、目を離すことや手を離すことができず、買い物時財布からお金を出す時でさえ、長男の手を離せませんでした。ある日、ちょっと手を離したすきに、神隠しのように居なくなってしまいました。名前を呼んでも、親の呼ぶ声の方に戻ってくるという事をしないので、警察に連絡し、パトカーに乗りおまわりさんと一緒に探していたら、近所の他人の家の2階に上がり込んで泣きもせずポカンとしていました。注意しても理解せず、母親にも人間にも興味がなく、こちらの言っている事は全く理解せず、唸るだけの息子は、人間世界からかけ離れたオオカミに育てられたような子供でした。

このように、自閉症は、言葉だけの問題では無く、心を閉ざしていることでも無く、幼児期の頃からこんなにも違うのです。

生まれた時から違いがあることから、親の育て方の問題や砂糖の取りすぎ、テレビの見せすぎが問題でないことがご理解いただけると思います。

 

●自分から知恵をつける事は難しい

 毎日、ゴロンと横になり、小さなミニカーを動かし、回るタイヤを見続ける生活。

それ以外に、自分から、何かに興味を示すという事はなく、「遊ぶ」と言う事ができません。人のやっている事を真似すれば良いのですが、「言葉」があるということさえ理解していないため「言葉」の真似どころか、「動作」に関しても「真似をする」という事をしません。

「子供からのアプローチが無い」「目を合わせない」「指差ししない」などコミュニケーションにつながる能力が劣っており、この状態のまま自由にさせていても、

自分から知恵を吸収していくことは困難だと気付きました。母親の私の方から、色々、世界を広げ、楽しい遊びを教え、遊びを通して知恵をつけさせていく方法が必要ではないかと考えました。