16.突き放す覚悟


相変わらず言葉は不十分なので、中学校は特別支援教室に通う事に決めました。特別支援学級のある区立中学校に通うには、家からバスで10分程、そこから徒歩で20分ほどかかります。バスを降りてから中学校までの徒歩の区間は、車の往来の激しい道路の陸橋を渡り、曲がりくねった道を歩いていかなければなりません。最初は、送り迎えをしていましたが、このままでは何歳になっても親がそばにいなくては行動できない人間になってしまう。また、心配していたら、一生子供から離れられなくなってしまう。人間、どんなに注意していても、どんな事が原因で死ぬかわからない。病気になり、突然死ぬかも?また地震等がきて死ぬかも?そう考えたら、もし、交通事故にあっても、それが寿命だったと考えるしかないと考え、2週間ほどして、思い切って1人で通わせる覚悟をしました。中学生になると親と一緒に歩く事を嫌がるようになり、電車に乗る時など直前にサッと違う車両に乗り、神隠しのようにわからなくなりいつも親を困らせて、親離れの兆候が見えてきていたという事もあります。最初は、バスに乗せ、後から自転車で追いかけ、決められたバス停で降りることができるか?隠れながら、後をつけていたりしていましたが、子供を信じる事にしました。知的には遅れていると言っても、1人で通う事は、本人に緊張をもたらせ、自信につながったのか、しっかりしてきて、顔つきも変わってきました。

 

●階段は1歩づつ上がれば本人の力に

中学の特別支援学級では、学力より、「就職すること」を目標に、教育がなされました。手先の作業、忍耐力をつける為「スウェーデン刺繍」が行われました。3年間の間に、クッション、テーブルセンター、バッグなど沢山の作品が完成しました。手先の器用さと根気よくやる力をつけるという事で、息子の就職につながり特別支援学級を選び良かったと思います。手先の器用さと根気よくやる力をつけるという事で、息子の就職につながり特別支援学級を選び良かったと思います。

前述にも書きましたが、ある日、学校から持ち帰ったノートに3桁の算数の足し算が沢山書かれていました。私は驚いて、先生に尋ねると、本人が全てやり遂げたと言うではありませんか?小学校6年間、数の概念を指導してきましたが、3桁の計算など1度もチャレンジしたことはありませんでした。新しいことに自分からチャレンジして良かったと思うのと同時に、自分の足で1歩階段を登ったことに感動しました。年齢に関係なく子供の能力に合わせ、指導し続けてきて良かったと思いました

一人通学の緊張感もまた、知能に大きく影響したと思います。まわりの子供と比較するのではなく、自分の子供の能力をしっかり見て、子供にふさわしい力をつけてあげれば、自分でその上の階段を登る事ができると思った出来事でした。掛け算も割り算も教えてはいません。その代わり、「電卓の使い方」を教え、買い物に行った時、いくら使ったか、お母さんに買い物代として、いくら請求すれば良いかはわかるようになりました。

難しいことは、わからなくて良い、むしろ「生活力」があれば良いと思います。